喜多流大島能楽堂定期公演

2022年4月17日(日)、大島能が空洞の定期公演で能「藤戸」のシテを勤めます。

平家物語を題材にした曲で、今放送中の大河ドラマ、鎌倉殿の13人にも登場した佐々木4兄弟の内、佐々木盛綱が和として登場します。源平の戦い、藤戸の合戦で勝利した佐々木盛綱は備前の国児島の領主として入府します。その盛綱の前に、一人の老女が現れ、漁師である息子が罪もなく殺された、その息子を返してくれと訴えて出ます。初めはしらを切る盛綱も自らの行いを告白します。合戦で武功をあげるため、土地のものだけが知る浅瀬を案内させ、口封じのために道案内をしてくれたその漁師を刺し殺したのです。老女は悲しみのあまり半狂乱となり盛綱に詰め寄ります。盛綱は盛大な仏事を催して漁師の魂を弔うこと、残された家族には手厚い保証をすることを約束し老女をなだめるのでした。能の後場は殺された漁師の亡霊が現れて無残に殺された恨みを述べ、その苦しみを見せますが仏道の供養によりその魂は成仏するのでした。

戦乱の世に犠牲になるのはいつの時代も弱い立場の人々であることをこの能は訴えています。今まさに考えるべき深いテーマを描く能「藤戸」です。


この日曜日、4月17日の公演のチラシをアップしました。今回は私は能「藤戸」を勤めますが、その前に能「月宮殿」の上演があります。これは能でも他の流派では「鶴亀」といいます。長唄などにも同じ曲がありますね。鶴は千年、亀は万年の齢を生きるとされ、めでたさの象徴でもあります。この鶴と亀を子供が演じることがよくあります。今回も姪の七海(小2)が亀、シテの狩野了一さんの姪御さん直奈ちゃん(小5)が鶴を勤めます。かわいらしく清々しい鶴亀の舞を是非ご覧ください。